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般若理趣経

 大乗仏教の経典であり、真言宗においては根本経典である。

 この世を肯定し現実世界に如来のお姿を現す方法を説く。
 つまり、この世で幸福になっていく教えと功徳を説いたもの。

序章 …胎蔵大日如来図…大毘盧遮那如来が、過去・現在・未来において、欲界の他化自在天の王宮にて金剛手大菩薩・虚空蔵大菩薩・金剛拳大菩薩・文殊大菩薩・祉発心転法輪大菩薩・虚空庫大菩薩・催一切魔大菩薩の八大菩薩と八十億の聴衆に法を説く。

第1章…金剛薩睡図…大楽の法門(大楽の内容、欲の本質を示す)
 大いなる楽しみは欲から生じる。
 欲の本質は現世の肉体にそなわる五感の感応を満たす楽しみに溺れるのでなく、欲を深め浄化し宇宙と共に生きる事が本当の楽しみとしたなら、欲とは自分において無限の向上であり、他に対しては無限の慈愛となって顕現する。

第 2 章…大日如来図…証悟の法門(大楽とは悟ることであり悟りの智慧を示す)
 悟りは金剛石のように堅固であらゆる煩悩を打ち砕き、永遠の生命を知り限りない幸福を受けることが出来る。
 心は清浄の安らぎを得て宇宙と一体となる働きとなる。
 悟りの智慧は大楽の世界を開く。

第 3 章…降三世図…降伏の法門(悟りの心境を示す)
 「貪・瞋・痴」の心の三毒から生じる煩悩を治めるよう、自我と戦い自己破滅の欲を、仏にむかう自己完成の欲に高める金剛の働きに徹した悟りを体得する。

第 4 章…観自在図…観照の法門(清浄心の大切さを示す)
 煩悩が調伏され欲が向上の意欲となると、世界が清浄であると観れる。
自も他も本性は平等であるという悟りを体得し、自他一体の大悲に生きる。

第 5 章…虚空蔵図…富の法門
 仏性を顕現させ清浄なる世を観ると、この世は無駄なものが何一つなく宇宙は無限の富であふれている。
 それは私すべきでなく施与の徳を育てる悟りを体得して無限の富を得る。

第 6 章…金剛拳図…実働の法門
 身・口・意が一つとなって実働するのが大宇宙である。
 全ての行動を如来の行動に高め、和合した働きをすると、自己の完成と他者の教化にはげむという悟りを体得し、不思議な力を得たりして確固とした自己を確立する。
   
第 7 章…文殊図…転字輪の法門
 森羅万象を阿字の法輪に転じて、執着を断つ観法を修行方法として示す。
 阿字に転ずるとは、自己認識や見方を否定し、否定から本質的な現象界の潜象である不生不滅の世界に目を開かせる。

第 8 章…纔発心転法輪図…入大輪の法門
 万象の個々の本質を見極めれば、如来の世界に転入することを示す。
 (発心すれば成就していく)不滅の生命であると観れば如来法輪へ入り、すべては如来の現れと観ずれば創造する事業輪に入る。

第 9 章…虚空庫図…供養の法門
 奉仕を通して如来の世界に入る事を示す。
 物質を施す利供養。
 真心をもって敬う恭敬供養。
 働く行為の行供養。
 菩提心を持ち修行することも、経典を学び法を知ることも如来の供養である。

第 10 章…摧一切摩図…忿怒の法門。
 大忿怒の智慧で自我の執着を調伏し克服して、如来の働きを体得することを示す。
 一切衆生は対立があれども、本質は一つであり等しく仏性があり、煩悩や迷いの心に対しては聖なる教化の働きとして忿怒があり、忿怒もまた調伏されて浄化される。

第 11 章…普賢図…普集の法門 (3 章から 10 章をまとめたもの)
 せまい自我を克服して如来と一体となる。
  三章…煩悩(心の三毒)を治めて
  四章…森羅万象の清浄を観て
  五章…全てこの世は宝の宝庫と知る
  六章…そして創造の働きを得る
  七章…修行方法として貪瞋痴を治めるには阿字輪を転じ
  八章…本質を見極める修行方法として阿字輪に帰入し
  九章…また、供養の実践をすることも
  十章…大忿怒も修行の方法である。

第 12 章…大自在天図…有情加持の法門
 生きとし生ける一切の衆生にも同じく悟りへの道が具わり清浄心が顕現すると如来となる。

第 13 章…七母女天図…諸母天の法門
 七母天女は衆生を殺し肉を喰う悪母人であったが、悪鬼にも仏性が具わると聴いて、心を入れ替え、衆生を仏の世界へいざなう事を誓った。

第 14 章…三兄弟図…三兄弟の法門
 梵天・ヴィシュヌ・シヴァの三兄弟が自らの欲界魔王の天にも仏性が具わるとの真理を知って、感激のあまり真言を献じた。

第 15 章…四姉妹図…四姉妹の法門
 大自在天の眷属であり妃である四姉妹が説法を聴いて、感激のあまり真言を献じた。

第 16 章…五部具会図…各具の法門
 衆生が如来世界を体得し、智慧を獲得した光景を示す。
 世界すなわち全ての森羅万象は仏の世界の顕現であり宇宙と一体となった如来の生き方があることを説く。

第 17 章…五秘密…深秘の法門
 衆生と如来の深い交わりを示すと共に永遠の真理を体得する。
 この喜びは、この素晴らしい世界を人々に与えるために教化する大悲願の立場を明らかにする。


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